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2008年7月 9日 (水)

仏像の名称

『日本彫刻史基礎資料集成』の仏像の記述の項目はまず、銘記・納入品・形状・法量・品質構造・伝来・保存状態・備考の順に記述してあります。田邊三郎助氏はさきの論文で、それぞれの項目についての記述方法を詳細に論じでいますが、これが、いはば標準的な仏像の記述方法であろうと思います。ここでは、まず仏像の名称について考えてみたいと思います。田邊氏は“どんなものでも、そのものをもっとも簡明な形で記述したものが名称である”と仮定すると、『基礎資料集成』はたとえば、文化財指定名称として記述される“木造薬師如来坐像”ではなく、単に”薬師如来像”と記述するのはよいのだろう。としています。つまり、『基礎資料集成』では、木造の部分は品質の項目で、坐像の部分は形状で記述されるものだから、必要ないという、いはば合理的な解釈によるものと思われ、仏像の名称の最少単位は種類である。と言っています。

さて、私は今、データベースソフトを使って、仏像のデータの入力を行っていますが、基本的には、『基礎資料集成』の項目の建て方に則って設定をしていますが、まず問題となったのは、仏像の名称をどう記述するか、でした。『基礎資料集成』のように最少の種類だけの記述でいいのか、あるいは"指定名称”で記述するのかということでした。

コンピュータの画面上で、表形式で最少の種類だけの記述でデータを並べてみると、実にわかりづらい違和感をおぼえるのです。それは、データベースでは、そのデータを抽出するか、並べ替えの操作がこれから行われることなのです。その時、仏像の種類だけの羅列しか画面に出ないとすると、それからの想像力がでてこないのです。

たとえば、『基礎資料集成』では「阿弥陀如来及両脇侍像」と記述されたものが、『指定名称』方式では、「木造阿弥陀如来立像及両脇侍立像」となります。『基礎資料集成』方式では、阿弥陀のさまざまなバリエーションのどれかを想像することが不可能なのです。これはもしかしたら、善光寺式かもしれないし、来迎形の阿弥陀かもしれない。石造かもしれない。つまり、データベースでは、さらに抽出の作業のための言葉を考えなければならないのです。また、抽出の回数がそれだけ増えることになります。

仏像の名称とは、種類という最小限の単位で表現すればいいというのは、いわゆる電子化する場合には無駄な作業を強いることになり、逆に不合理な場合があるということなのです。『指定名称』方式で、材質+種類+形状という記述方法の方が、その名称を見たとき、想像力が生まれるのです。つまり、「銅造阿弥陀如来立像及両脇侍立像」と書かれていれば、善光寺式かと想像できるのです。また、抽出の回数も減ることになり、抽出方法もわかりやすくなります。

Photo_2 データーベースは、細かく項目を設定するのが、本来の機能を発揮させる方法であるかのように書かれているのが多いですが、文字データの処理の場合は必ずしもそれが合理的とはおもわれないところがあります。紙に書かれていたデータとできるだけ乖離しないやり方のほうが、違和感なく作業ができるというのが、私の基本的な考えです。

さて、仏像の名称は一般的には、その所有者(お寺が多い)の使っている名称で記述されます。たとえば、孝恩寺阿弥陀如来坐像(伝弥勒菩薩坐像)と記述します。これは、その形状から、明らかに阿弥陀如来なのですが、寺伝で弥勒菩薩といっているので、このように記述するのです。“伝”という実にいい言葉によってうまい表現ができます。

 

 

 

Photo ところが、『指定名称』で「木造多臂観世音菩薩立像」というのがあります。これは、高槻市の廣智寺にある仏像で、はじめは六臂の十一面観音立像だったのが、解体修理によって、八臂の観世音菩薩立像であることが判明したために、このような名称になったと書いてあります。しかし、八臂観音菩薩像というのは、ちょっとおかしな表現で、むしろその形状からは不空羂索観音像であろうとおもいます。お寺では、そのように名称を変更しているようですが、大阪府指定では、「多臂観世音菩薩立像」なんて、今まで聞いたことのない名称になってしまいました。確かにこの場合、“伝”が使えないのです。いはばカッコで逃げられなくなってしまったのです。どうしたらいいのでしょう。

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