『坐勢』考
最近、仏像の入門本が相次いで出版されているようで、ある人から、今は仏像ブームなんだって?と聞かれます。たしかに、仏像研究者による、仏像入門の本が先月相次いで本屋の店頭にならんでいました。
ざっと立ち読みしていると、どうも基礎的な説明は、どれも似たり寄ったりとした構成になっているようです。私の興味ある“坐勢”についての項目をみても、、相変わらず、“半跏踏下像”という名が跋扈しています。しかも、“半跏趺坐”の説明に、足の裏が衣に隠れて見えない図を載せています。これが“半跏趺坐”ですといっても、読者は理解できているのだろうかと、疑問がわいてきます。
上記は『望月仏教大辞典』に載る「半跏趺坐」の項の説明です。
また、真鍋俊照編『日本仏像事典』(平成16年12月1日発行)の「半跏趺坐」の頁(p64)では、
「半跏趺坐 仏教における坐法の一つ。両足をそれぞれ反対の大腿部の上にあげる坐法を全跏趺坐(結跏趺坐)というのに対して、いずれかの片足を大腿部からおろして膝前におくのを半跏趺坐という。(中略) 片足垂下像や片足踏下げ像を半跏として用いるのは誤用である。」(田村隆照)
として、望月仏教辞典とおなじ図を載せていますが、それ以外の坐法についての記載がありません。
読者が知りたいのは、ある仏像を初めて拝したとき、この坐勢は何というのだろうか?という素朴な疑問です。ところが入門本は坐勢に関しては、いままでどおりの既定の単純な分類を押しつけているだけです。
たとえば、野中寺菩薩像が「半跏踏下像」というのなら、宝菩提院の菩薩像は何というのでしょうか。瑞林寺の地蔵菩薩像は、何という坐勢なのでしょうか。普賢寺の普賢菩薩像は「半跏像」でいいのでしょうか。
これらの入門書は、このことに何も答えていません。いわゆる“半跏踏下像”は四十八体仏のような金銅仏ではよくありますが、半跏ではない“片足垂下像”の作例のほうがはるかに多いのです。片足を前に投げ出している坐勢も坐像の中に数多くあります。そういう仏像についての説明をしないのは、入門書としての機能を果たしているのでしょうか。どうも、何か同じマニュアルに基づいて書かれているような気がしないでもありません。
“踏下げる”という言葉がいつごろから使われるようになったのか、いろいろ調べていたところ、現在一番古そうな資料をみつけました。
『日本國寶全集』第九輯(大正12年12月1日発行)に、観心寺蔵釋迦如來像が掲載されています。その解説には、
「須彌座の上に半跏趺坐する像で、踏下げた左足は此種の像に屢ゝ見る如く宣字座から擡頭する蓮華に支えられてゐる。」
とあります。“踏下げる”という言葉はどうも相当古くから使われているようです。それにしても、これが半跏像?
どうも「踏下像」を抹殺するには、相当根が深かそうで、大変な労力が必要なようです。
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コメント
以前にも言ったような気がしますが、“踏下げる”という変な日本語があるのでしょうか。美しい言葉ではなく、地に足が着いてない、力の入らない言葉です。ブランブランの言葉です。学者がこのような日本語を使っていいものでしょうか。
仏像の本もそうですが、落語の本も何か多く目につきます。興味があるからなのか、絶対数が多くなっているからなのかはわかりませんが、多くの人に興味を持ってもらえるのは、好ましく思います。
投稿: 足下踏子 | 2008年12月24日 (水) 23時58分