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2009年8月 6日 (木)

仏像盗難

 8月4日(火)の午後7時30分から、NHKの番組『クローズアップ現代』で「仏像盗難~地域の“宝”どう守る」を放送したそうです。というのは、私はそれを見逃してしまいました。あわてて、NHKのサイトを開いてみましたが、その要約しかわかりませんでした。ゲストには東大寺の森本公誠長老が出ていたところをみると、おおよその主旨は推測できました。

このところの、仏像の盗難件数が増えて、いわゆるヤミ市場が形成されているとしています。その原因として、おそらく、仏像が単なる”お宝”になり、信仰対象と見られなくなったことが一因としてある、としているのでしょう。(このところは、番組を見ていないので、推測です。)

そして、奈良県警では、「文化財保安官」なる職種の人員を配置し、盗難対策に乗り出した。とあります。

現在取り得る仏像盗難に対処する方法としては、一般の窃盗犯として捕まえることしか、手をうっていないような気がします。

仏像は本来的にも、現在でも、信仰対象なのです。したがって、基本的には参拝者の目にふれなければならないのです。そこに、セキュリティを施すことには、矛盾がおきます。

そうはいっても、盗難対策としては、厳重に管理された場所に保管するしかないのでしょうか。ある程度の管理は必要でしょうが、泥棒はどんな対策をしても、狙った獲物ははずさないはずです。

むしろ、次の段階として、盗むメリットを失わせることが重要になってきます。たとえ、盗んだとしても、それが、お金にならなければ、徒労におわります。それには、闇市場を造らせないこともそうですが、いわゆる骨董品として、仏像が堂々と売買されている現状を見直すべきでしょう。仏像の出生が不明なものが、流通のルートに合法的に乗ってしまうというのは、どうみても変です。以前、熊本のお堂にあった仏像が盗まれ、海外に流出し、それを買い戻すということがありました。これなど、流通にかかわった人間に何の罪も問われないのであれば、また起きるという可能性があるということです。

NHKの番組で、森本長老をゲストに呼んだということは、仏像は崇拝対象であって、モノでないということを言いたかったのでしょうが、そういう精神論のみでは、仏像の盗難は減少しないでしょう。

仏像を文化財として見るということは、信仰対象から外れて、単なる“お宝”としてしか見なくなるというのは、論点をすりかえた議論です。信仰対象と文化財は矛盾しません。むしろ、所蔵者である寺院は積極的に人の目にふれさせることによって、盗難を防ぐ効果があると思うのです。いたづらに“秘仏”と称して、人目にふれさせなかったりすると、泥棒の格好のターゲットになりやすくなります。

大部分の寺院は仏像の写真撮影を通常は許可しません。これも、寺院側からすれば信仰対象に対してフラッシュをあてることに抵抗があるのでしょうが、考え方によっては、信仰対象を多くの人に見てもらえる(言い方がわるければ、拝める)絶好のチャンスなはずです。仏像の写真がいけないのであれば、寺院で仏像の写真は売るべきではないはずです。

また、仏像の悉皆調査をして、仏像1体1体の戸籍を作ることによって、自由な流通を防止したり、管理したりすることが出来ます。そのような、調査が進めば、戸籍のない仏像は盗難品であることがすぐに判明します。

そのためには、早急にもれのない悉皆調査が必要なのですが、結局、国の補助金頼みで、地方では金がないので、できないという現状のようです。

Photo 左写真は、NHKで放送された、今年6月に盗難にあった、黒滝村の権現堂の蔵王権現立像です。黒滝村では、悉皆調査が行われ、その報告書が出ており、これだけの写真とデータが公開されています。

また、神奈川仏教文化研究所のサイトでは、日本全国の盗難文化財の情報を載せています。しかし、自治体の調査不足か、その状況判断のミスかはわかりませんが、盗まれた仏像の写真もないのです。これでは見つかるわけがありません。

この仏像がもし流通に乗ったとしたら、当事者は知らないではすまされないはずです。

こういった調査によって、仏像のデータを公開することが、盗難に対する、有効な防止策になると思うのですが。

役所の縦割り行政がそれを阻害しているのでしょう。まったく!!

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コメント

 春秋堂日録楽しく読んでいます。
 「クローズアップ現代」で仏像盗難という番組を放映すると聞いて、録画しながら見ました。
 内容はお察しの通り、森本長老が「仏像は単なる像ではなく、必ず魂が入ってる。その部分がいつの間にか忘れられてる。昔はそんな事はなく、現代では盗もうとした人間の心にカギがかかってない」と蕩々とお 話しされていました。
 しかし、仏像盗難というのは、大昔からあったことで、極端にいえば、興福寺の仏頭まで遡ります。今更精神論を振りかざしても、と思ってみていました。
 冒頭にみうらじゅんは出てくるは、掘り下げは淺いはと、30分の番組なのに内容的には、ちょっとがっかりでした。
 「文化財保安官」なる人も奈良県で一人しかいなく、「盗難対策は管理する側でやってももらわないと」という状況のようです。唯一、各尊像の写真とデーターを記録していっている、というのが救いですね。

 当サイトの記事は、各新聞社等からの孫引きですが、確かに写真さえ掲載されていれば、と切実に思います。
 Jcast テレビウォッチで少し詳しい内容が書いてありますので、参考まで。
http://www.j-cast.com/tv/2009/08/05046860.html

 神奈川仏教文化研究所の“盗難文化財”情報は、ほかのサイトにもない非常に貴重な情報だとおもいます。それだけに、もっと充実していればと単純に思いました。決して、貴研究所の記事の不備を指摘したわけではありません。
しかし、情報源の新聞が、写真も掲載しないのでは、充実の仕様がありませんよね。しかも、おそらく新聞社は著作権をふりかざすのでしょう。
神奈川県警では、サイトに写真を載せて情報を求めています。これも、一地方自治体でやっても効果はあまりないのではと思います。
http://www.police.pref.kanagawa.jp/mes/mesc3008.htm

放送、一部分を見ていましたが、内容は忘れてしまいました。
仏像盗難を取り上げたこと自体、内容はともかくとして、所有者、管理者である寺院や、集落に、注意を喚起する意味で、それなりに良かったのではないでしょうか。
自治体や、それから依頼された学校、研究機関が調査を精しくしていれば、役に立つことがありましょうが、調査の対象は、あくまで文化財として保護の対象にふさわしいものに限定されてしまいます。
普通の信仰の対象や地域の財産に、自治体や国が、特別に保護したり、干渉することはありえません。
たとえ文化財に指定されていても、県や市町村のレベルでは、ほとんどほったらかしにされているのが現状です。
指定になっている仏像を、寺社、地域で管理しきれなくなって、地元の博物館や、資料館に寄託するケースが増えてきているようです。これがいいのか悪いのか、見方によるでしょう。
結局、所有者、管理者である寺院や、神社、地域に頑張ってもらうしかありません。
無住の寺社は益々多くなり、お堂を維持管理してきた、地方の地域社会の連帯は益々弱くなっております。
ただ、最近は寺社にお伺いすると、盗難が流行っているという話題がよくでてきます。それなりに認識は深まっていると感じられますが、では具体的に対策を講じているかというと、ほとんどがなにもなされておりません。

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