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2009年9月13日 (日)

横浜開港記念会館ステンドグラス(改修後)承前

 ステンドグラスの両面になぜ透明ガラスを嵌めたのでしょうか。その理由を想像すると、地震や汚染、打撃から守るため、ということだとおもいます。果たして、そのガラスはそういった機能を有しているのでしょうか。ほかに問題が出てこないのでしょうか。この問題を検証してみようとおもいます。
Photo  まず、このガラスは耐震性能があるのでしょうか。前のブログの最後のことろで、JASS17についてお話ししましたが、すくなくともJASS17の規程どおりでなければ、耐震性は確保できません。また、このガラスは強化ガラス10mmだそうですが、強化ガラスというのは面強度は普通ガラスの3~5倍ありますが、地震のような強大な応力には対応できません。むしろガラスは、もし割れたとき最小限の被害ですませることを主眼に置くべきです。とすると、強化ガラスは破損したとき、細かな破片になって落下します。割れた時の安全性には問題があります。つい最近三菱商事ビルで硝子が落下したのも強化硝子です。割れても落下しない合せ硝子が有効なのです。しかしこれだけの大きさですと、板のゆがみは我慢しなければなりません。もっとも、強化ガラスもゆがみがでるので、ゆがみに対しては同じですが。
 また、地震の揺れの方向に対しても、問題があります。ガラス面に直角に横揺れが生じた場合、透明ガラスとステンドグラスの間に隙間があったのでは、ステンドグラスを保護することにはなりません。むしろ、透明ガラスはステンドグラスに密着しなければ、耐震の意味がありません。

 

 
Photo_2  外部の打撃から有効なのか、という問題も同様です。強化硝子といえども割れないわけではありません。強化硝子は厚さのうちの外側1/6が圧縮層、内部の2/3が引張層になっていて、そのバランスで強度を増している硝子です、ということは、10mmでいえば、およそ1.7mmの深さの傷が発生するとそのバランスがくずれ、全体が細かく破損して落下します。つまり、たまたまガラスのそばに近寄った時に破損してガラスをかぶる危険があるのです。もっとも細かな破片なので致命傷にはなりませんが。
 汚染から守るという理由はもっともな理由です。しかし、それよりもこの工法はステンドグラスを両方のガラスで密閉しているように見えますが、実際は穴だらけです。透明ガラスは外部からシーリングで施工しています。しかし、木枠と押縁の間にはシーリングが施工されていません。しかも、コーナーの継目にも何もしていません。木は時間の経過とともに、いわゆる“やせ”が生じます。つまり隙間ができるということです。

 

 

 

 

Photo_4 むしろ両面にガラスを施工すると、結露対策が一番の問題になるのです。このような密閉した内部は、ピンホールができて外気が入ったとき、湿気も入り、内部結露を生じさせます。それが時間の経過とともに、ガラス面に結露の痕跡としてのシミが残るのです。こうなると、ガラスを外さないと、拭き取れません。こんな事例は、複層ガラスではよくあった事故例です。(上写真は群馬音楽センターのカーテンウォール。白くなっているのが内部結露した複層硝子)それに対する対策は松本ステンドグラスのサイトに詳しく掲載されているので、改めてここでは書きませんが、この施工例では結露対策は考慮していなかったのでしょう。もっとも、内部なので、温度差を考慮しなくていいので結露はおこらないという判断だったのでしょうか。
Photo_3  最後の問題は、透明ガラスを入れたことによる、ガラスの映り込みです。見る位置によってちがいますが、照明器具などが映りこんで、全体が見づらくなってしまうことがあります。(左の鳳凰のステンドグラスの下部に照明器具が映っています。)これは、博物館の展示ケースで以前から問題になっていたのですが、それに対する対策に関心がいまひとつありません。この問題に見学者は実に鈍感です。ガラス越しに見る美術品が映り込みでよく見えないのにおかしいとおもわないのです。展示者もいかに最良の状態で見せることを主眼におかなければいけないのに、実に無頓着です。一時私は博物館に行くとき、黒い紙を持っていったことがあります。ガラスケースの前で、その紙で照明をさえぎって映り込みを防いだのです。でも、他の見学者に迷惑がかかるので、もうやめましたが。
Photo_5  透明ガラスは透明ではありません。多少の色がついています。さらに透明ガラスの可視光透過率は10mmで86.7%、反射率7.5%です。しかしこれは入射角0°の場合です。一般的に入射角度が60°より大きくなると反射率が大きくなります。たとえば、透明フロート硝子10mmの場合、入射角60°では、反射率が35%にもなります。つまり、斜めからみると透過率が落ちて照明器具などが映り込むのです。斜めから見た位置に照明器具を配置しないといった、内部の照明器具の配置計画をしないと、映り込みはなくならないのです。その内部空間の全体的な設計的配慮が必要なのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

Photo_6 また、旭硝子は「低反射ガラス」という製品を出しています。これは、映り込みをできるだけ少なくするという製品です。これとても、反射率は1%です。映らないわけではありません。また高透過ガラスというのも製品としてありますが、10mmでは透過率91.3%、反射率8.3%です。普通のガラスにくらべて無色に近くなっているので、もとの色に近い状態で見ることはできますが、それとて、ガラスがない状態で見るのとは見た目に、はっきりとわかる差があります。
 ステンドグラスの製作者はその作品をできるだけ、オリジナルの色で見てもらいたいと願うはずです。ガラスを通して見て、果たしてオリジナルな色が見られるのでしょうか。この問題に対して、製作者は実に簡単に妥協してしまっているように見えます。

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