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2009年11月 8日 (日)

ガンダーラ仏真贋論争(経過編)

 先日手に入れた、主に毎日新聞記事のスクラップから、ガンダーラ仏真贋論争の経過をたどっていこうとおもいます。

  • 62. 5. 2 奈良博で4月29日~5月31日まで開催中の『菩薩』展に出品されている「石造弥勒菩薩立像」が贋作であると、古代オリエント博物館研究部長の田辺勝美から奈良博に内容証明郵便で質問状が送られていた。
  • 62. 6. 3 所有者の亀廣記念医学会の亀廣市右ヱ門が記者会見。「奈良博の松浦正昭普及部長の仲介によって、ニューヨークの美術商、ウイリアム・H・ウォルフから37万5千ドルで契約、前払いとして、12万5千ドルを送金した。奈良博が輸入者となって、100年以上経た古美術品として無税で、大阪空港に到着した。日本に到着後精算とした残りの25万ドルはまだ送金していない。」
  • 62. 6,18 奈良博の西川杏太郎館長は「ガンダーラ仏研究協議会」を7月3日にメンバー13人で開催することを発表。
  • 62. 6.20 美術商から、残金遅延料を払えと要求。
  • 62. 6.26 亀廣氏、奈良博を批判。
  • 62. 6.30 石仏を亀廣記念病院から、奈良博へ搬送。
  • 62. 6.30 毎日新聞が「真贋論争」の解説記事を掲載。
  • 62. 7. 2 毎日新聞が田辺氏の自説を掲載。

Photo

  • 62. 7. 3 奈良博講堂で「ガンダーラ仏研究協議会」を非公開で開催。13:30~17:30に及ぶ。出席者は奈良博から西川杏太郎、河田貞、光森正士、河原由雄、松浦正昭の5人、それ以外から田辺勝美、高田修、樋口隆康、肥塚隆、秋山光文、西村公朝、馬渕久夫の7人、オブザーバーとして、亀廣市右ヱ門。以上計13人
  • 62. 7. 3 18:30より記者会見。座長の樋口隆康氏は「これ(協議会)によって、ガンダーラ仏が本物か、偽物か、断定はできなかった。研究者として、シンポジウムで相手を負かした方が勝ちという結論にはできない。結局、こういう(真贋)問題は、全部が偽物、一部に他の材料をつぎ足すケースなどがあり、どれをとって偽物とするかという問題がある」と説明した。
  • 62. 7. 4 毎日新聞が各出席者の意見を掲載。奈良博館員以外の大勢は「補修部分など疑問が残るが、それだけでは偽物とは言えない」。田辺氏は「全部が偽物」。亀廣氏「残金の支払は保留」。毎日新聞の解説(斎藤清明)は樋口隆康氏の個人的見解として「今のところ、ホンモノでもニセモノでもない」と書いている。奈良博はこれで、「本物」と決着したと判断。以後これにもとづいて反論。
  • 62. 7. 7 亀廣氏が記者会見で、未公表のX線写真を公開。
  • 62. 7.10 奈良博は亀廣氏に抗議。「信義に反し、極めて遺憾。」
  • 62. 7.12 亀廣氏は奈良博に石仏を預かって再調査をしてほしいと要望。
  • 62. 7.14 奈良博の西川館長は記者会見で、亀廣氏に不快感を表明。再調査を拒否。法的手段をとることを考えていると表明。
  • 62. 7.17 石仏を亀廣記念医学会「関西記念病院」へ搬送。亀廣氏、協議会の資料を提出することを条件に引き取る。
  • 62. 7.23 奈良博、石仏の返却業務を完了した、と表明。
  • 62. 7.28 江上波夫古代オリエント博物館館長の記者会見。「9月中旬から調査委員会を設置し6ヶ月をめどに報告する」と宣言。
  • 62. 8.25 亀廣記念医学会は、補修による価値低下分を差し引き、残金を支払った。
  • 62. 9.16 古代オリエント博物館に調査のため石仏を移送。
  • 62.10.23 田辺勝美氏の記者会見。「偽作説の新たな根拠を示す。」
  • 62.11.26 亀廣氏の記者会見。「世界の博物館・大学に出したアンケートの回答で19通の内、6通が偽物。」と発表。
  • 62.12.25 亀廣氏の記者会見。「非破壊検査の結果、首や腕を接着材で接合。」と発表。
  • 63. 3. 7 亀廣氏の記者会見。「パキスタン政府考古局総裁の書簡を公開→本物には見えない。」 奈良博西川館長の反論→断定を避けた極めて穏当な表記。
  • Photo_4 63. 3.14 亀廣記念医学会は、奈良博に対して、「奈良博が十分な調査を怠り、偽物の立像を買わせた」として、国を相手に、5100万円の損害倍賞請求の訴訟を大阪地裁に起こした。
  • 63. 3.14 衆院法務委員会で坂上富男氏(社会党)が取り上げ、参考人として、田辺勝美氏、内田弘保氏(文化庁文化財保護部長)に聴取。
  • 63. 4.15 奈良博西川館長の記者会見。「国会に出された、田辺氏の30項目の贋作説に反論。」
  • 63. 4.22 田辺氏の記者会見。「奈良博の本物説に再反論。」
  • 63. 5.30 大阪地裁で口頭弁論。
  • 63. 6.20 古代オリエント博物館の協議会の調査報告。「100%の贋物。大小14個の石をエポキシ系接着剤で接合。」
  • 63. 8.11 奈良博の西川館長、二度目の反論。「近年の補修個所以外は接着剤は使われていない。奈良博の調べでは接合部は五カ所しかない。」
  • 04. 2.10 大阪地裁判決。海保寛裁判長。「奈良博に違法行為なし。したがって、ガンダーラ仏の真贋は検討するまでもない。」
  • 04. 2.10 大阪高裁に控訴。
  • 08.11.26 最高裁判決。第3小法廷尾崎行信裁判長。「上告棄却。真贋は判断せず。」

    ここまでの感想をあげると、
    ・まず、奈良博が石仏購入の仲介をしたのは、問題であったと指摘されている。権力を利用して策を労しすぎたということだろう。
    ・展覧会に展示する前の調査がおろそかだったことは、奈良博も認めている。それだからといって責任はないといっているのは役人のよくいう言い訳である。
    ・奈良博での研究協議会はそれなりの学者があつまっているが、結局、あまりにもせまいコミュニティの中での議論なので、十分にものが言えていないのは明白である。
    ・様式論は、傍証にはなるが真贋の決定的な判断にはならない。材質での判断も贋作者はいくらでもそれに対応できる技術をもっている。
    ・田辺氏は権力に立ち向かう学者として、マスコミの格好のヒーローにまつりあげられたが、それを田辺氏自身利用したようにも見受けられる。
    ・亀廣氏が訴訟を起こしたのは、それなりに評価できる。しかし、古美術品の贋物をつかまされるのは、購入者の責任であることは、この世界の暗黙のルールである。
    ・真贋の判定には、それなりの情報公開が必要である。つまり、補修の詳細な客観的資料が必要なのである。結論は白と黒だけではないということもある。
    ・翻って、今、古美術品の補修はどのようにしているのだろうか。後世の人がこのように判断に苦しむ補修をしていないだろうか。

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