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2010年5月22日 (土)

横浜市開港記念会館ステンドグラス施工法

Photo  横浜市開港記念会館ステンドグラス修復記念誌『甦る光』という本を手に入れました。

これは、以前書きましたように、この建物の2階に嵌っている3個所のステンドグラスの修復過程の記録です。

序文には、

「今後、この横浜で行われたステンドグラス修復技法を後世に伝えるための指南書としていただければ幸いです。」

としていますが、いくつかの点で、これは修理工事報告書とよべるものではないことがわかります。

まず、後世に修復の機会が訪れた時、この本によって、今回の修復の状況が正確に把握できるのでしょうか。まず、修復前の現状調査では、ガラスの破損個所の部分的な写真が掲載されていますが、図面で指摘していません。各部分にどのような色のガラスを使っていたのかの調査記載がありません。

 

 

 

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組み直し時に、11枚の新規ガラスを使ったと書いていますが、新規ガラスはどの部分なのかの記載がありません。

普通の修理工事報告書の体裁ならば、まず修理前の現状を記述あるいは図示し、修理後の状況、どこをどのように修理したかの記述あるいは図示が最低条件です。

この本はサブタイトルにもあるように、「修復記念誌」であって、「修理工事報告書」ではありませんので、後世の修復時にこれがどの程度役に立つかはわかりません。まあ市民にわかりやすい体裁にしたというコンセプトの本ということでしょう。

さて、このステンドグラスの修復後に、元の位置に取り付ける方法について、いくつかの問題点をあげておきましたが、その時は、取付後の状況のみで判断していたので、実際の取り付け工程とは多少の推測の違いがありました。以下、この本によって修正します。

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まず、修復後のステンドグラスを取付る前に、すでに、階段ホール側に透明ガラスが嵌っていました。これは、修復前のステンドグラスを取り外した後、透明ガラスを入れ、それにステンドグラスの写真のシートを貼って、修復中にも現状があまり変わらないようにしたためでした。

そのために、階段ホール側からの施工ができず、資料室側からのステンドグラスの施工となりました。まず、ステンドグラス4段を仮に組みあげて、その上から、格子状の補強棒を固定するといった工程になりました。何故階段ホール側のガラスを外してから、ステンドグラスを取り付けなかったのでしょう。先に取り付けた透明ガラスは、両面シーリングによって固定してしまっています。この状態ですと、ステンドグラスを取り付け、資料室側の透明ガラスを取り付けてしまうと、もう階段室側のガラスは取り外せなくなってしまいます。つまり、ステンドグラス側の内側のシーリングによってガラスが接着されてしまっているので、ガラスを割らないかぎり外せないことになってしまいました。例えば、透明ガラスの内側に汚れが付いたとき、もう対処のしようがないということになります。これは、ステンドグラスを取り付ける前に資料室側の透明ガラスのように内側をクッション材をはさむだけにして接着しないようにすればよかったのです。

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透明ガラスが嵌っていない状況ならば、まず格子状の補強棒を取り付けてから、順次下からステンドグラスを組みあげていった方が、位置の調整や、下からステンドグラスをひとつづつ固定できるので、安全に施工できたはずです。

また、この本によると、補強棒に結びつける針金は鉛桟に直接ハンダ付けしないで、座金付パイプを鉛桟にハンダ付けして、パイプに銅線を通してから、補強棒に結ぶ方法を採っています。この方法について以下のように説明しています。

「ステンドグラスパネルの補強方法は様々あるが、丸棒を使い針金や鉛の帯で結び付けてしまう伝統的なこの手法は、パネル自体のたわみを無理には抑えない免震構造に似ており、自重による変形、地震による振動に対してフレシキブルにエネルギーを吸収する方法になっている。」(「16 針金ハンダ付け」P84)

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しかし、この銅線は補強棒の縦横のあらゆる位置で結んでおり、説明のように地震による振動に対してフレシキブルに吸収する方法になっているのでしょうか。

補強棒は縦横の交差を溶接しており、また、結果的に木枠に差し込まれているので、この補強枠はフレキシブルに変形しません。つまり、地震による層間変位に対応できないのです。13mmのステンレス丸棒がどの程度、地震の応力に耐えられるのか、どの程度までなら変形しないのかについての、検証をしたのでしょうか。

説明書によると、補強棒はあらかじめ開けておいた穴に差し込んで取り付ているようです。ということは、補強棒は枠の中で多少動くということかもしれませが、上下左右に木枠に固定していては、フレキシブルに動きません。

結局、木枠に固定された格子状の補強棒は、躯体に取り付けられた枠に固定されたもので、変形できない補強棒に針金でステンドグラスを固定しているという状態になっているとしか見ることができません。地震による層間変位には対応できていないということでしょう。

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