建築工芸叢誌
『建築工藝叢誌』という雑誌は明治45年2月に創刊され、大正3年1月までに24冊発行されました。そして第2期として大正3年2月から大正5年9月まで24冊発行されました。B4版よりちょっとのびた、およそ40頁前後の雑誌です。この雑誌は他に『建築工藝圖鑑』という写真集とセットになっていたようです。しかも会員制で頒布されていたようで、市販はされていなかったようです。発行元は「建築工藝協會」という名で、評議員には、伊東忠太、今泉雄作、新納忠之介、岡田信一郎、高村光雲、塚本靖、中川忠順、正木直彦、関野貞などの名が連なっています。内容は題名の通り、その時代の建築、工芸についての評論が主な内容となっていて、写真も豊富に掲載されています。
とくに建築については、有名人の新築住宅の紹介がときどき掲載されており、内部の写真平面図まで載っています。その住宅主の自慢を垣間見るようでした。
その中で、今回注目したのは、丁々生「ステインド硝子」(一)(二)という一文です。第三冊(明治45年5月)と第五冊(明治45年6月)に載っています。この文の挿図にステンドグラスの写真が白黒ですが掲載されています。第三冊には「京都村井吉兵衛邸浴室の窓」。
第五冊には、佐々木氏邸の窓、岩崎俊彌氏邸の扉、福島行信氏邸の窓、神戸村野氏邸の窓、大倉喜八郎氏邸の扉、同窓、賀茂丸食堂の天井の写真が載っています。
筆者によると、図案は佐々木邸が清水組、岩崎邸は辰野建築事務所、神戸村野邸は外国の意匠を摸したもの。福島邸は武田五一氏、賀茂丸は賀茂の競馬を意匠したもので、長崎の奥山という人の意匠だそうです。
宇野澤辰雄は明治44年に亡くなっていますので、いはばその追悼文のようになっています。また、第五冊には帰国したばかりの小川三知が「亞米利加に於けるグラスモザイック」という一文を載せています。
そして、その頁の左下には宇野澤組の広告が作業中の写真つきで載っています。この雑誌ではこの号だけが写真つきです。それ以後毎月の号に広告は載せていますが、上記右のように、単に文字だけの広告になっています。
それにしても、実際の配色はどんなだったのでしょう。白黒の写真だけでも、実に日本的で、華やかさがある図柄です。
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