西早稲田駅
開業したばかりの地下鉄副都心線に乗って、西早稲田駅に降りました。早稲田大学理工学部方面の改札口をでると、壁面に大きなステンドグラスが嵌っているのが目にとまりました。
江戸時代から、昭和初期頃、あるいは現代の風俗までさまざまな様子が描かれています。おまけに、駅のホームに止まっている電車を断面で切り、内部を描いています。電車も細部にわたって精密に描かれていますし、人物も髷を結った江戸の町人から、現代の若者の風俗まで、実に精密に描いています。
よく見るとなかなかユーモラスなところもありおもしろく見ることができました。絵の作者は山口晃という人で、こういった細密な絵を描くのを得意としているようです。
ステンドグラスの技法の面から見ると、鉛線と、絵具で描く線とを、うまく使い分けています。鉛線はどうしても、線が太くなるので、おおきな輪郭に使い、さらに細い線は、絵具で描いています。
ステンドグラスそのものは、山口晃氏が製作したのではないのでしょうが、実際の原画から、色硝子のピースにわけて、さらに、硝子に描くか色硝子のピースにするかの選択など、原画を描いた側と、実際にステンドグラスを製作する側との緊密なコミュニケーションが必要だったのでしょう。この作品は、名前こそでていませんが、ステンドグラスを製作した人との共同作品とすべきなのでしょう。
さて、このステンドグラスで気になることが2点あります。
まず第1には、ステンドグラス1枚当りの大きさが大きいこともあるのでしょうが、補強の金物の影が目につきます。1枚あたり、横2本、縦1本はいっています。嵌っているところが、地下の壁面のために、外光が入らない場所で、内部から照明を当てていることもあるでしょうが、非常に目立ちます。
第2にステンドグラスの前に透明ガラスを嵌めていることです。そのために、天井の照明がガラスに反射して、移り込んでしまいます。これは、当然、ステンドグラスの保護のために必要だったのでしょうが、ステンドグラスはそのガラスを直にみなければ、その色のよさが見えてこないのです。透明ガラスをとおして見る、ということは当然その本来の色彩をみせていないということなのです。
ステンドグラスは、パネルとして製作すれば完成だとしたら、それはちがいます。いかにそれをよく見せられる環境の中で展示できるかを設定してこそ、完成したことになるのです。そのひとつが、照明の方法および、その配置です。ステンドグラスを保護するためといって、透明ガラスをとおしてしか見られないのでは、その良さも半減ですし、蛍光灯が映り込んだ絵をみてもすこしも感動がうまれません。少なくとも、ある程度の広い地点で見ても、照明が映り込まない配慮が必要です。そのためには、設置場所の照明器具の配置にまで建物の設計段階から検討をしておかなければなりません。その辺のきめ細かな配慮がまだまだです。
さて、改札口をでて、外に出るとそこはなんと、早稲田大学理工学部のキャンパスの中庭に出てきてしまいました。学校は駅から徒歩0分です。
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