肩布考(五)
肩に布を掛け、胸元でそれを結ぶ着衣を何と呼ぶのがいいのか、考えてみました。
まず、『田中千代服飾事典』 1973年6月15日 同文書院、丹野郁編『総合服飾事典』 1980年10月5日 雄山閣 で用語を拾ってみますと、以下の項目がありました。
- えりまき【襟巻】
- かたかけ【肩掛】
- ショール【Shawl】
- スカーフ【Scarf】
- ストール【Stall】
- ひれ【領巾】
- マフラー【Muffler】
まず【襟巻】ですが、事典では、首に巻き付けるものの総称を言うようで、おもに防寒などの目的で使う布の意のようです。
【肩掛】も襟巻と同様の総称としての意味に使われるようです。
【ショール】は婦人用の正方形、三角形、長方形の布製、あるいは毛糸製の肩かけのことで、言葉の起源はペルシャ語だそうです。ヨーロッパでは19世紀に作られたようです。日本では、明治時代に洋風化にのって、ショールは和服の肩に装飾用にかけるようになり、一般化していったようです。
【スカーフ】は一般に首に巻いたり、頭をおおったりするのに用いられる正方形、あるいは長方形の薄手の布または編物のことをいっています。西洋風のスカーフは戦後以降の流行ですが、日本の女装に「御高祖頭巾」(おこそずきん)というのが江戸から明治時代にあったようです。
【ストール】は主として、長方形の帯状の装飾用布片で、長さは床にとどくほど長いのもあります。カトリックの聖職者がしているのも「ストール」と言い、中世期以来使用されているものです。
【マフラー】えり巻の一種。19世紀以降は、防寒用として使われ、素材は毛織物、絹織物など多様のようです。ふつうは男子用の襟巻きを指すことが多く、婦人用は「ショール」と呼んで区別しているらしいです。
これらの用語の中では、仏像の肩に着装している布は、現代でいう【スカーフ】が一番近いように思います。胸元で結んでいることから、薄物の布を使用しているようですし、マフラーのように防寒用に着けているようにも見えません。またストールほど長い布ではないようです。
また、現代のスカーフは普通、90㎝角程度の大きさで正方形をしているのが多いようですが、有名ブランドのエルメスのサイトを見てみると、必ずしも正方形とは限らなくて、長方形(ロングスカーフというらしい。33㎝×130㎝~53㎝×160㎝程度)もあるようです。
今の女性は普通、正方形のスカーフを対角線に折って肩に掛けているのですが、それを長方形に折って(バイアス折りというらしい。)肩に掛けて胸元で結ぶ方法もあり、それならば、仏像のようになります。
使い方も仏像と現代の女性も同じように装飾用として、着装しているのがわかります。
ということは、仏像の肩に掛けて、胸元で結ぶ布は、それが仏像に着けるものか否かにかかわらず【スカーフ】あるいは【ロングスカーフ】といってもいいのではないでしょうか。
このスカーフはかならずしも肩に掛けるばかりでなく、腹上のところで、胸甲を固定するために結んでいる仏像があります(頂法寺毘沙門天立像)。これもスカーフと言った方がいいのではと思います。
ところで、アントキノ猪木は赤いタオルを肩から掛けていますが、本物のアントニオ猪木は「マフラー」を肩からかけているのでしょうか。それとも、かなり長いし、結んでいるように見えないところを見ると、「ストール」かな?
参考ブログ
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