三日月形の目
神戸市立博物館の『海の回廊』展に出品されていた仏像の中で、はたと立ち止まった仏像は、神戸市北区・寿福寺の聖観音立像でした。
目が眼球のふくらみ部分の下の方に彫られていて、そのためにマブタの線が三日月状につりあがっていることです。
こういった、眼球のふくらみの下方にマブタを彫る仏像は、思い出すと、島根県の大寺薬師の仏像もそうでした。
左は観音菩薩立像(大像)です。右は月光菩薩立像です。この2体がかなり下方にマブタを彫っていました。
さて、いろいろ探してみると、他に京都府の地福寺阿弥陀如来坐像もどうもそのようです。
これらの仏像の目の彫り方を見てみると、当然、眼球のふくらみまでは普通に彫りすすめているようですが、いざ眼のマブタを彫る段になると、その位置が極端に下方になるのはどういうことなのでしょうか。
これからはあくまで推測ですが、これらの仏像は眼球までは工房で仕上げてきて、仏壇など、高い位置に設置してから、眼を彫ったのではないかと、想像されることです。
通常、仏師の眼と仏像がほぼ同じ位置で眼が彫られたのなら、こんな下方に彫るはずはありません。すくなくとも、仏師は仏像の眼が祈る人と眼が合うような目線を考えるはずです。時代が降りますが、鎌倉中期以降で極端に前のめりにした如来立像があります。これも、祈る人と仏像との目線が合うようにしたものです。
とすると、仏壇など高い位置に仏像を据えて、祈る人の位置から指図して、眼の位置を決めたのだろうという想像はつきます。
これらの仏像は、工房で完成品としてから、お寺に納入したのではないということになります。
『無眼』の仏像は、こんな経過から出現したのではないかという想像もできるとおもうのですが、いかがでしょうか。
話かわって、神戸市立博物館のステンドグラスです。丸いのは2階の喫茶室の入口にありました。この博物館の前身が南蛮博物館だけあって、世界地図の図柄です。
日本が端っこで、中心はインドになっているようです。
もうひとつは1階の階段室にありました。これは細長い形で、どうも銅鐸をモチーフとしているようです。全体的には幾何学的な模様ですが、原始絵画で描かれているような人間や鳥が抽象的に描かれています。下部の赤いガラスがひときわ目立ちます。
これらのステンドグラスはそれほど古いものではないようです。このデザインは誰なのでしょうか。元学芸員氏に聞いてみましょうか。
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神戸市立博物館の二点のステンドグラスは、1982年開館時に制作した物です、
いずれも博物館所蔵からの出典です、世界地図は「四都図・世界図」(重文)屏風より、
銅鐸は、桜ヶ丘古墳4号鐸(国宝)銅鐸については、階段下より見上げると、銅鐸のプロポーションに近く見えます。
投稿: 平岡 正勝 | 2011年7月20日 (水) 14時48分