五龍閣
清水坂を半分ほど登って、路地にはいると、洋館が目の前に現れます。
入口は、高級な感じを受け、入りずらい外観です。
以前は、順正という豆腐料理の店でしたので、そんな外観になっています。
去年、改装をして、五龍閣カフェとして、喫茶の店としてオープンしました。おかげで、気楽にこの建物に中に入ることができました。
建物は3階建で、1階にサンルームがあり、そこにステンドグラスが嵌っていました。
この建物は、清水焼の窯元で、磁製義歯や高圧碍子の製造で財をなした、松風嘉定の住宅として建てられました。大正3年に木造の2階建和館が造られ、大正10年に3階建の洋館が竣工したようです。和館は、すでになく、洋館のみ残っています。
洋館の設計は、京都大学の建築科を創設した武田五一です。
玄関を入ると、靴をぬぎ、部屋に入ると、そこは大広間になっていて、その奥にサンルームがあります。今は喫煙室になっていますが、3方の窓のランマに飛んでいる鳩の図柄のステンドグラスが嵌っています。デザインはいたってシンプルです。
今まで、武田五一設計で、ステンドグラスの嵌っていた建物を見たのは、求道会館・旧西尾家住宅と、ここで3軒目ですが、3軒とも、図柄をわざと単純化したような感じがします。この図柄が武田のデザインだったのかどうかは不明ですが、どうも、武田はステンドグラスでどの程度複雑に技術的に表現できるのかを理解していなかったのではとおもわせます。
それにしても、このステンドグラスのよごれはどういうことでしょうか。改装してから、まだ1年も経っていないのに、このガラスのよごれはいただけません。
たしかにステンドグラスの清掃は神経をつかいますが、ここを喫煙室にしてしまったのも、ステンドグラスのメンテナンスにはよくありません。せめて、こまめに清掃をお願いしたいとおもいます。
広間とサンルームの間仕切りのランマには3個所アーチ状の窓があります。建具・硝子とも当初のようです。
喫茶店は1階部分しか使っていませんが、店の人に頼んで、2階も見せていただきました。
2階は大部屋と小部屋があり、豆腐料理屋の時に使っていたままで、座敷になっていました。しかし、大理石の暖炉がそれぞれの部屋にあって、もともとは洋室だったのがわかります。しかし、天井は和風の格天井です。この辺が武田のコンセプトなのでしょう。
2階の小部屋の窓2個所にステンドグラスがありました、しかし、これは建具が新しいものですので、新たに作ったものかもしれません。デザインも1階のサンルームと手法が違います。
もうひとつ、2階の女子便所の引き違い窓にステンドグラスがありました。チューリップの柄です。これは、建具も古いままなので、当初のものかもしれません。
この建物は玄関脇に吹き抜け階段が3階まで続いています。中の意匠も和洋折衷の様式をかもしだしています。そこに武田の設計の意図が出ているような気がします。
まして、外観をもう一度見てみると、塔屋の屋根には風見鶏がありながら、屋根の棟には鴟尾がついているのです。
実に不思議な建物です。武田は和と洋を非常に意識していた時期だったのではとおもいます。
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