宇野澤辰雄の世界
やっとこの本を手にいれました。先月から予告はあったのですが、いつ発売されるかわからなくて、新刊本屋に日参していたのですが、ついに、堪忍袋の緒が切れて通販で買うことになりました。
そうしたら、発注してなんと、2日で届いてしまいました。これでは、新刊本屋さんは商売上がったりでしょうね。
この本は一昨年出版された『日本のステンドグラス 小川三知の世界』の第二弾となるものです。第一弾は、テレビの特番で脚光をあびた小川三知を世に知らしめた本として、注目をあびました。
今回は二匹目のドジョウをねらったにしては、ちょっともの足りないところがありました。
たしかに、写真はふんだんに掲載されていますし、硝子ならではのあざやかさや、デザインの新鮮さに対するおどろきは、以前にもましてありますが、何かすっきりしないものがあります。
宇野澤辰雄という人は、日本で最初のステンドグラス製作者であるのに、実際に手がけた作品は2、3点だったようです。つまり、この本に掲載されている33軒の建物に嵌っているステンドグラスは、その後の後継者が起こした会社での作品がほとんどということになります。
そこが小川三知と違うところなのでしょう。小川三知の作品は、小川自身が美術学校の出身なので、そのデザインに深く関与したであろうことは、想像できますが、「宇野澤ステインドグラス製作所」には、複数の職人がおり、その後、独立して別の会社をおこして、製作しています。この本に載っている作品は、いはば、宇野澤系の作品ということになるのでしょう。
そんなで、この本に掲載されている33軒のステンドグラスの内、実際に見た数はまだ2桁にも及んでいません。当然、未公開の建物もあるので、すべて見るわけにはいきませんが、この本を見ながら、本物の想像をしていますが、こと、ステンドグラスは写真と実際に見るのとでは、雲泥の差がでます。それは、その時の外の天気による光の違いで、まるでその印象が変わってしまうからです。人工光を通してみるのでも、光源が違えば、全然印象が違って見えます。
この本の「あとがき」で、増田彰久氏は、2つのステンドグラスの紹介をしています。ひとつは、宇野澤辰雄の数少ない作品の「旧渡邊千秋邸(現トヨタ記念館)」です。この建物は非公開なので、見られませんが、もうひとつ新宿の伊勢丹のステンドグラスを挙げています。
このステンドグラスは以前にも紹介しましたが、屋上に上がる階段の躍場の窓に嵌っています。今でも、いつでも見られるステンドグラスです。淡い色調で、数種類の型硝子をうまくつかっています。
増田氏はこんなシンプルさに気品を感じていて、これが日本的なステンドグラスの在り方だと感じられてならない。といっています。
次は『大正、昭和期のステンドグラス』として、全3巻としたいと抱負を述べていますので、是非期待したいところです。
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