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2016年10月10日 (月)

小笠原伯爵邸

 先月、旧小笠原貞幹邸の見学に行って参りました。新宿区河田町にある洋館です。現在は都の所有ですが、「小笠原伯爵邸」という高級レストランとして営業されています。なので、見学はいつでも出来たのですが、何せ高級レストランで、結婚式もやる施設ですので、なかなか行けませんでした。ところが、たまたま、9月の午後、レストランの営業時間外の1時間ほどの間を無料見学できると知りまして、出かけた次第です。

Photo

建物の竣工は昭和2年、設計は曽根中條設計事務所、スパニッシュ様式のRC2階建てです。
玄関をはいるとホールの天井に鳩のステンドグラスがありました。

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この建物のステンドグラスの制作は小川三知といわれています。パンフレットによると、この鳩のステンドグラスは当時の写真をもとに、イタリアで復元したものだそうです。

現存しているステンドグラスは、客間の窓1箇所だけのようです。

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客間には、3箇所の両開き窓がありますが、そのうち、中央の1箇所のみ残っています。
建物にあった、当初の建築設計図面によると、窓3箇所とも、同じ図柄のステンドグラスが嵌まっていたようです。

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建築当初の設計図面が見られるのは、大変貴重なことです。この図面から読み取れることは、設計者とステンドグラス制作者との関係が理解できることです。
とくに、設計図面に、ステンドグラスの絵柄を書き込んでいるということは、施主、設計者、ステンドグラス制作者との、打ち合わせによって室内空間のデザインが決められていたことが、わかるからです。

この建物は、図面によると、他にもステンドグラスが嵌められていたのがわかります。
今の食堂の窓を見てみると、型ガラスを斜格子状の鉛線でつないでいるだけですが、

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図面では、窓の中心にエンブレムのようなステンドグラスがあったようです。

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また、図面では、廊下の窓にステンドグラスがあったようですが、これは、まだ正式に決定した図柄ではなかったようです。田辺氏は「木立の中のエンジェル」という題のステンドグラスだったとしていますが、実際に嵌められたのかはわかりません。

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また、食堂前の中庭から見て左端にある格子のついた窓に、ステンドグラスがあったようです。

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図面には、ステンドグラスだけではなく、ガラスの種類も銘記しているのがあります。

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客間から喫煙室へ入るドアですが、ドアのガラスは「面取硝子」と書いてあります。
また、斜め格子の図柄を入れた窓には、「鉛硝子」とかいてあります。鉛線で斜め格子状に組み込んだ硝子窓を指しているのでしょう。2階へあがる階段室の窓にも同様に書いてありました。

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この建物の中では、一番大きな窓で、普通は、色硝子を使うのが一般的ですが、この建物は階段の上がプライベートな部屋なので、目立たないようにしたのかもしれません。「グラスエッチング仕上 鉛硝子」と書いてあります。

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現在は、透明のガラスが入っていますが、当初は、不透明なガラスが入っていたのでしょう。「エッチングガラス」が今でいう「タペストリー加工」なのか、単なる「スリガラス」なのかは不明です。

丸く出っ張った、喫煙室の外観には、花模様の装飾タイルが貼ってありました。

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内部は、寝室、和室などプライベートな部屋の間仕切りを外し、レストランの大部屋にしたり、厨房に改造されたりしていますが、主要部分は残しつつ、改修されているようです。もともと取り壊す寸前までいった建物ですから、忠実に復元するということにこだわらなくて、これだけ残っているだけでもいいとすべきでしょうか。

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