関西仏像旅
ゴールデンウィーク前半に2泊3日の旅をしてきました。
4月30日
兵庫県立博物館「ひょうごの美ほとけ」展へ。
兵庫県の白鳳から江戸時代の仏像をならべた展覧会でした。その中で“半跏趺坐”像を確認することができました。
- 日野辺区 聖観音坐像
- 参考 遍照院 銅造如来坐像
神積寺像と遍明院像は右の足裏が左手に隠れて見えないので、“半跏趺坐”と断定するには躊躇するが、足の組み方の造形は、”結跏趺坐”の造形意図で造られていないと判断できる。
このような、形状の坐像は、仏師の造形意図をくみ取ることによって、”結跏趺坐”ではなく、”半跏趺坐”像と判定するのが、今の所最良の判断材料であろうと思います。
大阪市立美術館「木×仏像」展へ。
この展覧会も飛鳥から江戸時代までの全時代の木彫仏を展示していました。
その中で、3体の”半跏趺坐”像を確認しました。
東大寺弥勒如来坐像
この仏像は、以前から言及してきましたが、膝部分の奥行きのなさが、そうさせているのでしょうか?
宮古薬師堂 薬師如来坐像
四天王寺 阿弥陀三尊像のうち阿弥陀如来坐像
右足裏が左手に隠れているので、正確には断定できませんが、膝の造形からみれば、”半跏趺坐”と認めてもいいとおもいます。
5月1日
奈良に泊まり、まずは、興福寺中金堂の「阿修羅 天平乾漆群像展」へ。これも以前言及していますが、中尊の前に華原磬を置くならば、当然、婆羅門がその馨を打つ動作をした像を配置すべきなのでしょう。
奈良国立博物館には、まだ時間があるので、東金堂へ。ここには、仏頭がありました。まさにこの須弥壇の中から発見されたものです。
奈良国立博物館「快慶」展へ。
さすがです。カタログもすばらしい資料です。その中で、随心院 金剛薩埵坐像を確認することが出来ました。
奈良博の学芸員の山口隆介氏が調査した報告では、この像を“半跏趺坐”と書いているのに、今回のカタログでは、岩井共二氏の執筆です。当然、坐法についてふれていません。
なら仏像館
この館に展示している半跏趺坐像を列挙してみます。
京都 観音寺 菩薩坐像
文化庁 銅造薬師如来坐像
この像は、キャプションによると、新薬師寺本尊の宿模だと書いていますが、そうすると、新薬師寺像も“半跏趺坐”と認めるのでしょうか。
金剛寺 降三世明王坐像
鎌倉時代ですが、もうひとつの脇侍、不動明王坐像とともに、“半跏趺坐”に造っているのは、図像から参照したものと思われます。
その他
- 見徳寺 薬師如来坐像
- 当麻寺 宝冠阿弥陀如来坐像
- 奈良国立博物館 阿弥陀如来坐像
- 奈良国立博物館 五大明王像のうち不動明王坐像
が“半跏趺坐”像と認定できます。
ひさしぶりに、国会図書館関西館へ行きました。
東京の本館と比べて新しいせいで、いやな思いもせず、大変心地よく使えました。
5月2日
まずは、京都へ。去年開館したばかりの「旧三井家下鴨別邸」へ。ここは、下鴨神社の糺の森に入る手前にあります。
明治13年、木屋町三条にあった別邸を大正14年に移築、更に増築した建物です。
残念ながら、旅行社用に2階を押さえられて、1階しが見せてもらえませんでしたが、手吹き円筒法とおもわれる板ガラスを見つけました。
京都非公開寺院の公開で仁和寺へ。
霊宝館で、阿弥陀三尊像を拝観。
金堂、経蔵を拝観。
そして、ひさしぶりの広隆寺へ。
足が遠のいていたのは、あまりいい評判を聞かないので、躊躇していました。
案の定、講堂は、金網がしてあり、おまけに、扉をほんのちょっと開けて、中の三尊が覗ける程度の開き方をしていました。
ずいぶんと、ふざけた対応です。ちゃんと、人を配置して、何で堂々と拝観させないのでしょうか。新霊宝殿の真っ暗闇は、どうしようもない。
島原へ。角屋もてなしの文化美術館へ。
2階部分は、説明付きで、別料金。もっとよく見せてほしいところですが。
龍谷ミュージアムから、京都国立博物館へ。
京都国立博物館は、「海北友松」展をやっていましたが、平常展の彫刻だけ見たいを思っていましたが、なんと、全て、特別展の料金でないと入場できないということで、パスポートでの入場を断られました。
今回の「海北友松」展の会場が本館ではなく、新館で行われたためでしょうか、それにしても、平常展の見学者を切り捨てる態度は、もとの役所仕事にもどってずいぶんと態度がでかくなったなという印象です。平常展のみの入場ができる、装置はいくらでもできたはずです。
そして、平常展で見たかった仏像は
金剛寺不動明王坐像
高山寺 薬師如来坐像
神護寺 薬師如来坐像
特に、高山寺像、神護寺像は、俯瞰で見ることができ、“半跏趺坐”であることを確認しました。
今回の旅では、多くの“半跏趺坐”を実見することができました。なかなか以前の写真だけでは、その撮影者が、坐法について意図して撮影していないので、実見するしかないのが実情です。
調査者が、ちゃんと、坐法についての知識と判断能力がなければ、これからも、仏像の形状の記述は、まゆにつばをつけることが続くことになります。、
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