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2021年3月18日 (木)

旧石川組製糸西洋館(改修後)

 旧石川組製糸西洋館をはじめて訪れたのは、2012年6月でした。いままで見学会は行われていたようですが、2階に上がれる機会に見学を申し込みました。
その頃の西洋館は、入間市の所有になっていたとはいえ、まだ、改修もろくにされていない状態で、2階に上がるのにも人数制限をしていました。要は建物の強度上の問題があっったからでした。
その時、時間制限もあったりして、あわてて写真を撮っていたものですから、写真の設定が変わってしまったのに気がつかず、あとで、画像を再生すると、ずいぶんと失敗したり、肝心のステンドグラスがうまく写っていませんでした。

旧石川組製糸西洋館 https://shunjudo.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/post-008c.html

今回の訪問は、松本ステンドグラス製作所が、ステンドグラスの修復をしたことをSNSで見つけ、また、建物が修理されて公開がはじまったのを知り、出かけることとしました。
 建物の中に入るなり、さっそく2階の大広間に直行しました。以前見た時は、梅のモチーフのパネルの余白部分にヒビ割れがあって、パネルも少し孕んでいるようでした。

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[改修後]

修復後は、もちろん破損ガラスは入れ替えられていましたが、ガラスの種類の違いがわかるほど、新旧の差がはっきりとしていました。元のガラスと同じものを調達するのは大変困難であることは理解できます。それなりに近いガラスを探し出した努力は評価しますが、これが、現在の修復の限界かとおもいました。

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さらに、気がついたことは、4枚のパネルとも、横にそれぞれ2本ずつ、補強棒を入れたことです。以前のパネルには、補強棒は入れていませんでした。これは、パネルが室内にあって、保存状態がよかったことを考慮しても、自重によるゆがみがでてしまうのでいたしかたないのかもしれません。しかし、この縦長のパネルの補強は、横に補強棒を入れるよりも、縦に2本入れたほうが、補強棒によるゆがみの防止に役立つし、補強棒が目立たないのではないかとおもいました。一方、各パネルとも余白のガラスの面積が大きいため、そこの補強を考えると、横に補強棒を入れざるを得なかったのかもしれません。

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 自宅にもどって、以前に訪れた時の写真を見ると、2点その違いに気がつきました。

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[改修前]

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その1 修復前のパネルは、向かって左から、蘭、梅、竹、お茶の花と実 の配列になっていました。ところが、修復後は、向かって左から、梅、蘭、竹、お茶の花と実 になっていました。つまり、左の2枚のパネルが入れ替わっていたのです。
その2 左側の蘭と、右端のお茶の花と実のパネルが反転していたのです。
これは、一体どういうことでしょうか。修復したのですから、当然、何らかの根拠があって、現状を変更したはずです。説明板には、このパネルのモチーフは四君子を題材にしていると書かれています。四君子でいう 梅は冬、蘭は春、竹は夏、菊は秋 と中国絵画では見なされていて、このパネルでは、菊のかわりに当地のお茶の花と実を表現したと、されています。順番からいうと、冬春夏秋という順になります。四季の順番に合わせて、入れ替えたということなのでしょうか。それとも、この建物の創建当初の資料(写真など)があって、その当時の状態にもどしたというのなら納得できます。これは、その2の蘭とお茶の花と実のパネルの反転とも、関係することですが、現状を変更するには、それなりの根拠をもってすべきであって、あとで、説明できない変更はすべきではないとおもうのですが、しかも、これだけの現状変更をおこなったのであれば、修理工事報告書を作成し、その経緯を公開し、活字に残し、後世の修理時に役立てられるようにしなければなりません。この現状変更が正しかったとか、間違っていたかということは、問題ではないのです。現時点でどういう根拠で現状変更をしたのかを公開し、後世に伝えることが重要なのです。そうすれば、修復時に創作の余地を残さないことになるのです。それが、文化財の修理の基本理念であることを、しっかりと頭にいれてほしいのです。

4月25日に「ステンドグラス修復完了報告会」がおこなわれます。上記の疑問にすべてお答えしていただけるなら、申し込もうかなとおもっています。

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