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2022年3月

2022年3月26日 (土)

厚木市古民家岸邸の板硝子調査報告

2011年12月25日付けのブログにも掲載していますが、今回あらためて訪れてみました。
古民家岸邸(https://shunjudo.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-de8c.html)
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新しく写真を撮り直すとともに、どんなガラスが嵌まっているのかもう少しくわしく見ていこうとおもいます。

まずは、模様入りケシガラスの種類について見てみましょう。
蜀江文は、1階広間の内障子や、引き戸などに嵌まっていました。また、土間の色硝子の嵌まった窓にもありました。
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1階広間内障子 蜀江文
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1階土間ランマ 蜀江文

菊菱と一応名付けておきますが、1階の次の間の内障子と便所の窓にあります。
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1階広間次野間 菊菱文(仮称)
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1階便所 菊菱文(仮称)

また2階の内障子には東側の和室と西側の和室には菊菱、中の和室には大小菊菱文と名付けたガラスがあります。
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2階和室内障子 菊菱文(仮称)

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2階和室内障子 大小菊菱文(仮称)
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いわゆる紐抜が2種類、子持ち木爪と楕円抜き、と便所の窓に山を切り抜いた模様、そしてボカシも何カ所ありました。
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1階障子 子持ち木爪

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1階障子 楕円抜き

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1階便所 山型

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1階引き戸 ぼかし
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2階廊下引き戸 ぼかし

結霜ガラスも、1階では便所の窓、廊下の窓などに使われていますが、特に2階西側の赤色ガラスとの市松模様のガラスに多用されています。
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1階便所引き戸 結霜

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1階便所窓 結霜

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1階廊下引き戸 透明硝子と結霜硝子の市松

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1階廊下ランマ 赤色硝子 スウィトピー 結霜硝子

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2階女中部屋入り口 結霜


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2階西側窓 結霜硝子と赤色硝子の市松

加工ガラスはその他にスリガラスがあるぐらいでしょうか。

色ガラスは、1階土間のランマに黄色が2枚、青が1枚、緑が2枚はまっています。赤の色ガラスは、1階では便所、廊下のランマにあります。
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1階土間ランマ 黄、青、緑の色ガラス

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1階便所窓 赤色ガラス

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1階廊下ランマ 赤色ガラス

2階は女中部屋と、洋室の引き違い戸の上部に赤色ガラスがあります。
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2階女中部屋ランマ 赤色ガラス


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2階洋室引き戸上部 赤色ガラス


2階では、西側の窓に赤色ガラスと結霜ガラスが市松に嵌められています。
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型硝子は、2階廊下の下部の引き違い戸はほとんどが結霜ガラスですが、おそらく補修して代わりに嵌めた型硝子が3種類ありました。
それは、「つづれ」日本板硝子製 1988年、「しげり」旭硝子製 1964年、「スウィートピー」日本板硝子製 1970年のようです。
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2階廊下 補修ガラス 「つづれ」

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2階廊下 補修ガラス「しげり」


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2階廊下 補修ガラス「スウィートピー」


また、洋間のドアに嵌まっているガラスは、おそらく舶来の型でしょう。いくつか見た記憶がありますが、名前、生産地は不明です。
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透明ガラスは、平行に波打つガラスが見えないこと、細くのびた泡が見られること、不規則なゆがみがあることなどを勘案すると、ラバース法(機械吹き円筒法)による製品とおもわれます。
手吹き円筒法のような、斜めに筋が入るガラスが見られないこと、泡の入り方が少ないことと、ほぼ細長く入っていることから、手吹き円筒法ではないとおもわれます。
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母屋は明治24年(1891)に建てられていますが、その後、明治35年(1902)に母屋東側部分を、大正12年(1923)から昭和初期に母屋西側部分を増築しています。
ということから考えると、模様入りケシガラスなど、さらに透明硝子もおそらく、関東大震災後の改修時に入れ替えた可能性があります。その頃ならば、日本板硝子がコルバーン法で、板硝子は製作されていましたが、旭硝子はまだ、ラバース法で製造していたからです。
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もちろん、色ガラスは舶来品でしょうが、よく見ると、この色ガラスには、ほとんど泡もゆがみも見られないのです。製品としては、かなり進歩したものようです。
それぞれのガラスは、建物の増改築などの機会に部分的に代えられたのでしょうが、おおむね、大正から昭和初期のガラスが数多く嵌まっているようです。
特に、模様入りケシガラスでは、蜀江文、菊菱、大小菊菱の加工技術がすばらしく、相当練度の上がった製品のようにみえます。
それにしても、これだけ戦前の板硝子が種類豊富に残されているのは、賞賛に値します。
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2022年3月11日 (金)

蔵の宿 の色板硝子と模様入り板硝子

  少し暖かくなってきたので、桜が咲く前に出かけてきました。今回は、一応、宿にはなっていますが、個人の邸宅です。

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しかも、元県会議員をしていた人の家で、20数代続く名家でした。敷地内の建物は築200年の母屋、築180年の蔵が2棟、そして明治期の洋館です。数年前に、母屋と蔵の1棟の改装工事をして、外観も一部変更し、内部は、できるだけ変更しないようにしながら、使い勝手のいいように改修をほどこしているようでした。
さて、その母屋の建物の内部に、色板硝子と模様入り板硝子がはまっていました。家主のご老婦の話によると、元は便所の窓硝子に使われていた硝子だったようで、それを、玄関の内側の入り口の欄間と、座敷と座敷の間の障子の欄間、そして、廊下の突き当たりのはめ殺し窓に移して新しい建具に嵌めたとのことです。
ですから、もともと、色板硝子が市松模様に配置されたのは、つい最近の改修時のことのようです。
それでは、まず、玄関内部入り口欄間の硝子から、

色板硝子は、紫、緑、赤、黄、青 の5色、模様入り板硝子は、格子状と花と葉の模様の2種類。

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座敷の欄間は、色板硝子はなく、模様入り板硝子が斜め格子状と縦横の線を入れた模様の2種類が主ですが、1枚だけシンプルな斜め格子が1枚ありました。

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そして、廊下突き当たりのはめ殺し窓は、欄間に3枚横に入った窓とその下に縦4段横3列のはめ殺し窓があります。
上の欄間の中央には花模様の板硝子があります。下の段は、青、黄、赤、緑、紫の5種の色板硝子、模様入り板硝子は斜め格子1種類です。

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硝子を詳細に見てみると、細かな泡のある硝子や、かなり大きな泡も散見されました。どうもこれは、手吹き円筒法による板硝子のようです。とすると、おそらく、この板硝子は、大正時代にまでさかのぼる可能性があります。
いづれにしても、これらの模様入り板硝子の模様は、今まで見たことのないものでした。最近、手に入れた見本帳(おそらく戦後すぐのもの)を見ても同じ図柄がありません。この模様を作った業者はいったいどこにいるのでしょうか。いまだにわかりません。
それにしても、色板硝子と模様入り板硝子を使った民家の例がまたひとつ増えました。まだまだ、発見することができるかもしれません。
大変貴重な硝子であることを、是非、ご理解していただきたいとおもいます。

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