蔵の宿 の色板硝子と模様入り板硝子
少し暖かくなってきたので、桜が咲く前に出かけてきました。今回は、一応、宿にはなっていますが、個人の邸宅です。
しかも、元県会議員をしていた人の家で、20数代続く名家でした。敷地内の建物は築200年の母屋、築180年の蔵が2棟、そして明治期の洋館です。数年前に、母屋と蔵の1棟の改装工事をして、外観も一部変更し、内部は、できるだけ変更しないようにしながら、使い勝手のいいように改修をほどこしているようでした。
さて、その母屋の建物の内部に、色板硝子と模様入り板硝子がはまっていました。家主のご老婦の話によると、元は便所の窓硝子に使われていた硝子だったようで、それを、玄関の内側の入り口の欄間と、座敷と座敷の間の障子の欄間、そして、廊下の突き当たりのはめ殺し窓に移して新しい建具に嵌めたとのことです。
ですから、もともと、色板硝子が市松模様に配置されたのは、つい最近の改修時のことのようです。
それでは、まず、玄関内部入り口欄間の硝子から、
色板硝子は、紫、緑、赤、黄、青 の5色、模様入り板硝子は、格子状と花と葉の模様の2種類。
座敷の欄間は、色板硝子はなく、模様入り板硝子が斜め格子状と縦横の線を入れた模様の2種類が主ですが、1枚だけシンプルな斜め格子が1枚ありました。
そして、廊下突き当たりのはめ殺し窓は、欄間に3枚横に入った窓とその下に縦4段横3列のはめ殺し窓があります。
上の欄間の中央には花模様の板硝子があります。下の段は、青、黄、赤、緑、紫の5種の色板硝子、模様入り板硝子は斜め格子1種類です。
硝子を詳細に見てみると、細かな泡のある硝子や、かなり大きな泡も散見されました。どうもこれは、手吹き円筒法による板硝子のようです。とすると、おそらく、この板硝子は、大正時代にまでさかのぼる可能性があります。
いづれにしても、これらの模様入り板硝子の模様は、今まで見たことのないものでした。最近、手に入れた見本帳(おそらく戦後すぐのもの)を見ても同じ図柄がありません。この模様を作った業者はいったいどこにいるのでしょうか。いまだにわかりません。
それにしても、色板硝子と模様入り板硝子を使った民家の例がまたひとつ増えました。まだまだ、発見することができるかもしれません。
大変貴重な硝子であることを、是非、ご理解していただきたいとおもいます。
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