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2022年10月

2022年10月14日 (金)

『祈りの仏像 出雲の地より』展で思うこと

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 9月の終わりに松江まで行ってきましたが、今回は、いままで気になっている仏像が出品されていたので、大変満足感のある展覧会でした。もう一回現地に運んでわざわざ見に行かなくてもよくなったのは、本当にありがたい。
 そのひとつは、鰐淵寺観音菩薩立像(692年銘)です。その台座の格狭間を見たかったのです。いわゆる白鳳時代の格狭間の形状についてその一例を確かめることができました。
格狭間は、ひとつの装飾であり、時代にによってその特徴が現れるので、白鳳時代の格狭間の作例をまとめることによって、時代判定に資するとおもわれるからです。特に、鰐淵寺観音菩薩立像は銘文があり、基準作例となるものです。それで、四十八体仏を中心として、台座の格狭間の形状を見てみると、およそ3パターンに分類されます。

Ⅰ型:鋭角の突起が1つある形
Ⅱ型:鋭角の突起が2つある形
Ⅲ型:鋭角の突起が1つ内側にくぼむ形か、くぼみがない形

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Ⅰ型の例:法隆寺献納144号、148号、153号、162号、187号、鰐淵寺観音菩薩
Ⅱ型の例:法隆寺献納163号、164号、165号、狛坂磨崖仏
Ⅲ型の例:法隆寺献納167号、184号、185号

Ⅰ型の格狭間

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法隆寺献納144号

 

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法隆寺献納148号

 

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法隆寺献納153号

 

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法隆寺献納162号

 

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法隆寺献納187号

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鰐淵寺菩薩立像

 

Ⅱ型の格狭間

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法隆寺献納163号

 

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法隆寺献納164号

 

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法隆寺献納165号(辛亥年銘)

 

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狛坂磨崖仏

 

Ⅲ型の格狭間

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法隆寺献納167号

 

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法隆寺献納184号

 

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法隆寺献納185号

 

これらの仏像の台座の格狭間は、1つあるいは2つの突起を表す形状をしており、以後の時代の格狭間には見られない形式です。その中で、法隆寺献納165号は辛亥年銘(651)を有し、この格狭間は、狛坂磨崖仏の格狭間と全くといっていいほど共通点があります。格狭間という装飾は、仏像製作における決まり事(儀軌など)にはかかわらない形状といえるので、時代を充分に反映している装飾とみるべきでしょう。

 

もうひとつ、もう1回現地へ行って確かめたかった仏像が、今回、3体も出品されていました。
ひとつは、仏谷寺菩薩立像(伝虚空蔵菩薩)と、大寺薬師の4体の菩薩立像のうち、伝観音菩薩薩と伝月光菩薩像です。
この3体とも、目の形状に注目をしていました。仏谷寺菩薩立像の目の形状を見てみると、眼球の膨らみを彫刻し、その膨らみに上下の瞼を薄く彫っています。単眼鏡で見ると、墨て黒目を描いているようです。

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仏谷寺菩薩立像


大寺薬師の2体の菩薩像も眼球の膨らみを表し、上下の瞼を彫っているのですが、三日月状に極端に下に彫られています。下瞼は、眼球の膨らみの下端の線より上にあり、眼球の膨らみを彫った後に瞼を彫ったことがわかります。

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大寺薬師伝観音菩薩

 

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大寺薬師伝日光菩薩


なんで、こんなに下のほうに、見下ろすような目の配置になったのか気になっていました。以前、ひとつの仮説として、この2体の仏像は、工房で作品を仕上げた後、寺院に安置して、崇拝者の下から見上げる目線と合わせるために、現地で目だけ彫ったのではないかと想像しました。
もとはといえば、井上正氏が、“目のない仏像”について論究したことでした。なぜ目のない仏像が存在するのか?について考えると、この3体の仏像も、もとは目を彫っていなかったのではないかと想像しました。これは単なる霊木化現ですまされない理由があるのではないか、もう少し精緻に追求すべきではないかとおもうことが続いています。

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2022年10月 7日 (金)

旧須藤邸 色硝子・型硝子・加工硝子編

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 旧須藤邸にはステンドグラス以外にも戦前のさまざまな板硝子がはまっています。
まずは、色硝子から。大正後期に増築されたとされる奥座敷の建物の中の風呂場周りにあります。
まず、廊下と風呂場の間の引き違い戸

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廊下の突き当たりにある引き違い戸

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風呂場の中の引き違い戸

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そして、主屋からの廊下の引き違い戸にあります。

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色硝子は赤・緑・黄・青の4種類と結霜硝子を組み合わせています。その内、青の硝子にはサクラの模様を抜いたサンドブラストを施しています。さらに、廊下の小さな青の色硝子の1カ所は、サクラではない模様がサンドブラストしています。あとで、写真を見てみると、透明の硝子には“大小菊菱文”の模様入りケシガラスがあるのを発見しました。風呂場周りの窓は、いわゆる“山パテ”によるガラスの取り付け方法をしています。

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次に型硝子ですが、国産のモールをのぞいて、ほとんど舶来の型硝子のようです。
サロン入口の上が半円のドア

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サロンの廊下のランマ

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2階の窓

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1階サロン入口の引戸は、国産のモールよりさらに幅の狭いストライプ柄で、ステンドグラスで使われるCode(コード)と言われる型模様のようです。

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最後に加工硝子には紐抜きと絵柄のサンドブラストがありました。
まずは、紐抜きから2階の窓に”蕨木爪”があります。

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1階風呂場の窓の下部には“角丸”と“子持ち木爪”があります。

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1階の居室の引戸他、サロン2階の吹き抜け部分にある引戸など、ランマも含めて、“内丸子持”という模様が全般的に使われています。大判のガラスの加工は、板そのものの製造と製造機械の関係でおそらく戦後の加工とおもわれます。

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その他、居室の座敷窓のストライプ柄

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2階の窓は花模様の図柄のサンドブラストが2カ所あります。

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さらに、廊下の照明器具の傘にも模様入りケシガラスと思われるガラスが使われていました。

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色硝子と型硝子については、なかなか時代判定は困難ですが、いわゆるサンドブラストによる加工は、すくなくとも、大正期に入らないと作られていません。さらにサクラや、大小菊菱文のような加工は、型紙を使った技法で、大正から昭和初期ごろまでに流行った加工方法です。紐抜きは戦後も加工されていましたが、需要が落ち込んでしまって、もうその製造機械を探すのも苦労します。

2022年10月 6日 (木)

旧須藤邸 ステンドグラス編

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桐生市の住宅街に2階建ての大きな白い外壁の洋館があります。かつて金善織物株式会社の事務所兼住宅として明治前期から後期にかけて建てられたとしています。その後大正10年頃、増改築工事をしたようです。そして、所有者が須藤氏に替わり、数年前まで住んでいたようで、手入れもまだ行き届いています。今の所有者になって、月1回の公開に踏み切ったそうです。
 さて、この洋館には、10カ所以上にもおよぶステンドグラスが存在しています。そのほとんどがサロンと称する吹き抜けの建物の窓、ランマに取り付けられています。この南側の建物は、パンフレットによると、明治前期の建物で大正時代に改造したとしています。
そのサロンの前に、玄関横にある鳥のパネル。鳥の腹部と木の幹はリップルを使っています。

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サロンに入る扉のランマに真ん中が大きく、左右に小さい花を配し、両脇には結霜硝子をいれているパネルがあります。赤の硝子はハンマードのようにも見えます。

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その横には梅に鶯の図柄の日本画のようなパネルがあります。木の幹にはリップルを使って古木の質感をだしています。

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サロン入り口のランマには、2連の細かい花束模様のパネルがありました。これはかなり細かいピースを使っていますが、全てケイムでつないでいるようです。

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応接間入り口のランマには真ん中に大きなつる花の模様、左右に小さな花が配置されたパネル。背景の硝子は細かな柄の型硝子を使っています。

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もう一つのランマは中心に青の硝子を配した抽象柄のパネル

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サロンの大きな引き違い窓には、藤に孔雀の図柄のパネルがあります。背景の硝子はリーミーを使い、藤は幹から花まで表現していて、木の幹から花、さらに孔雀もすべて銅箔によるいわゆるティファニー方式でつくられています。

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その横の少し幅のせまい上げ下げ窓には、チューリップが左右それぞれの窓に描かれています。

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玄関から東側の居室には、菖蒲だろうとおもわれる花のパネル。花、葉の部分はティファニー方式のようです。

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2階の階段室のファンライトにバラと2頭の蝶の図柄のパネルがあります。

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最後に玄関右横の引き違い戸に花の模様が2種類あります。どうもこれは新しそうです。

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その他、玄関と風呂場にステンドグラス枠の鏡が1つづつありました。

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ステンドグラスの主なものは、玄関の鳥と居室の菖蒲、2階階段室の花と蝶以外は、サロンのある建物に集中しています。図柄、技法などを見てみると、戦前のものとしてもいいのかなとおもいます。作者は、不明ですが、須藤家の歴史史料などが発見されれば、わかる可能性を秘めています。それにしても保存も大変すばらしく、よく維持できたなと感心するばかりです。

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