ふじみ野市立福岡河岸記念館の模様入りケシガラス
ふじみ野市立福岡河岸記念館 埼玉県ふじみ野市 明治30年頃竣工 平成23年・24年、令和6年9月見学
内陸部では珍しい回漕問屋の建物です。新河岸川という荒川の支流を船運に使っていました。建物は主屋、台所棟、文庫蔵、離れがあります。離れは三階建てで、望楼の役目を持っていました。この建物は、私の板ガラス研究のきっかけを作ってくれました。初めて訪れた時、板ガラスの加工のバリエーションの豊富さに目をみはりました。特に、蜀江文。七宝文の板ガラスです。さらに、緑色の板ガラスを窓に嵌めるという発想も驚きでした。今から考えると、板ガラスが国内生産され始めた明治42年から、板ガラスは単なる透明だけではなく、さまざまな加工を通して、デザインを多様化してその用途を増やしていったのだろうと思います。板ガラスの加工は、スリガラスからはじまり、結霜硝子が生まれ、模様を入れたケシガラスと進化していきました。そして、型硝子の発生とともに、加工硝子は衰退していきました。いまや、その加工所、加工技術を知ることがむずかしくなっています。そんな中で、この建物に嵌まっている板ガラスの加工品を見ていこうと思います。
①主屋1階奥座敷両引き分け窓 [鶴亀・菊文 木爪二重組紐]
②はなれ1階 [七宝文]
③はなれ1階便所前引き違い窓 [中抜き、木爪 もみじ]
④はなれ1階障子 [子持ち木爪]
⑤はなれ1階障子 [角唐草角丸]
⑥はなれ1階額入り障子 [蜀江文]
⑦はなれ2階額入り障子 [木爪 もみじ]
⑧はなれ3階額入り障子 [内丸 松葉]
⑨はなれ3階格子片引き窓 [緑色硝子]
緑色硝子には、細長く伸びた泡があります。おそらく、ラバース法(機械吹き円筒法)によるものとおもわれます。さらに、主屋の内部の額入り障子には、手吹き円筒法とおもわれる板ガラスが嵌まっています。これが竣工当初のものとすれば、舶来の硝子となります。
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