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2024年9月

2024年9月18日 (水)

ふじみ野市立福岡河岸記念館の模様入りケシガラス

ふじみ野市立福岡河岸記念館 埼玉県ふじみ野市 明治30年頃竣工 平成23年・24年、令和6年9月見学
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 内陸部では珍しい回漕問屋の建物です。新河岸川という荒川の支流を船運に使っていました。建物は主屋、台所棟、文庫蔵、離れがあります。離れは三階建てで、望楼の役目を持っていました。この建物は、私の板ガラス研究のきっかけを作ってくれました。初めて訪れた時、板ガラスの加工のバリエーションの豊富さに目をみはりました。特に、蜀江文。七宝文の板ガラスです。さらに、緑色の板ガラスを窓に嵌めるという発想も驚きでした。今から考えると、板ガラスが国内生産され始めた明治42年から、板ガラスは単なる透明だけではなく、さまざまな加工を通して、デザインを多様化してその用途を増やしていったのだろうと思います。板ガラスの加工は、スリガラスからはじまり、結霜硝子が生まれ、模様を入れたケシガラスと進化していきました。そして、型硝子の発生とともに、加工硝子は衰退していきました。いまや、その加工所、加工技術を知ることがむずかしくなっています。そんな中で、この建物に嵌まっている板ガラスの加工品を見ていこうと思います。

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①主屋1階奥座敷両引き分け窓 [鶴亀・菊文 木爪二重組紐]

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②はなれ1階 [七宝文]

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③はなれ1階便所前引き違い窓 [中抜き、木爪 もみじ]

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④はなれ1階障子 [子持ち木爪]

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⑤はなれ1階障子 [角唐草角丸]

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⑥はなれ1階額入り障子 [蜀江文]

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⑦はなれ2階額入り障子 [木爪 もみじ]

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⑧はなれ3階額入り障子 [内丸 松葉]

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⑨はなれ3階格子片引き窓 [緑色硝子]

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緑色硝子には、細長く伸びた泡があります。おそらく、ラバース法(機械吹き円筒法)によるものとおもわれます。さらに、主屋の内部の額入り障子には、手吹き円筒法とおもわれる板ガラスが嵌まっています。これが竣工当初のものとすれば、舶来の硝子となります。

2024年9月11日 (水)

瀧山邸のステンドグラス

瀧山邸のステンドグラス 大阪市住吉区 昭和8年竣工 令和6年9月見学


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 先日行われた日本ガラス工芸学会の研究会と見学会で、初めて世に出たステンドグラスです。住宅街にある二階建てのスパニッシュ様式の住宅で、ステンドグラスは、①玄関ランマ、②応接室の丸窓、③応接室入り口のランマ、④玄関横の嵌め殺し窓、⑤2階階段室の丸窓、があります。また、応接室入り口の額入り扉と、応接室の窓の上部に、舶来の型ガラスが嵌まっています。
 吉田氏の発表によると、『建築寫眞類聚 スティンドグラス 第二』 大正15年8月5日 の写真を参考にしたと思われるパネルがあるとのことでした。

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①玄関ランマ

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②応接室の丸窓は、99 の中央の写真。

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③応接室入り口ランマは、90 の上部分の写真。

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④玄関横の嵌め殺し窓は、92 の左側の写真。

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⑤2階階段室の丸窓は、99 の左側の楕円の写真を円形にした写真。

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型板ガラスでは、③応接室入り口の額入り扉の額に嵌まっている型ガラスは、CHANCE BROTHERS & CO,,(チャンスブラザーズ)の製品で、“KRISTELLE"という商品名で1900年から発売されています。

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下呂温泉・湯之島館

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また、ST GOBAIN,CHAUNY & CIREY が1923年に発行したカタログのNO.21にも同様の型ガラスが掲載されています。
日本では、下呂温泉・湯之島館に嵌まっているようです。

応接室窓上部の型ガラスは、調査中です。日本の例では、京都橋本の美香茶寮の玄関の扉に嵌まっています。

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京都橋本・美香茶楼玄関扉

ステンドグラスの地の部分のガラスは戦前では定番の“MOROCCO"が使われています。

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玄関には泰山タイルが乱貼りされています。

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参考サイト
「Chance Brothers:Chance's Figured Rolled Glass Patterns」「Old Window Glass:History of Textured and Patterned Sheet Glass」『Sash Window Specialist』
https://sashwindowspecialist.com/blog/history-patterned-window-glass/

『Manufactures des glaces & produits chimiques de Saint-Gobain,Chauny & Cirey - Catalog,Glass,Omamental Catalogs』
https://archive.org/details/societeanonymede00manu

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