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2024年11月

2024年11月14日 (木)

樟徳館(旧森平蔵邸) 大阪府東大阪市 昭和14年竣工 令和6年11月見学

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 樟徳館は、森平蔵が昭和7年から14年にかけて建設した自宅で、死後、自ら創設した樟蔭学園に寄贈されました。4年ごとの公開でしたが、コロナにより一回中止になり、8年ぶりの一般公開となりました。木材商であったため、ふんだんに銘木を使用した建物です。

注目すべきガラスは
①応接室の三連窓のステンドグラスとサンドブラストの椿模様
②応接室出入り口ランマのステンドグラス
③食堂出入り口の三連ランマのサンドブラストの雲ツバメ、梅模様
④食堂出入り口のランマのサンドブラストの梅模様
⑤広縁突き当たりの窓のサンドブラストのコンポジション模様
⑥居間床の間横の壁の窓のサンドブラストの模様
⑦次の間の暖炉両脇の戸棚の三連引戸のサンドブラストの蔓草模様
これらをひとつづつ見ていきますが、この樟徳館で使われている模様彫りの技法は、板ガラスにマスキングをして、模様を切り抜き、サンドブラストで硝子を彫り込む方法です。いわゆる”エッチング”は、それからさらに、フッ化水素酸によって、サンドブラスト面のギザギザをならす工程を加えます。この樟徳館のサンドブラスト加工は、フッ化水素酸を使ってはいません。サンドブラスト加工も、”段彫り”という技法を使い、数回にわけてマスキングの位置を変えてサンドブラストを行って立体的な模様に仕上げています。
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①、②応接室のステンドグラス
地に黄色のキャセドラルガラスを用い、花や葉にオパールセントグラスをつかっています。
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①、②応接室のサンドブラスト加工窓
三連窓は、両脇の縦半分と中央窓に、下半分をボカシ加工とし、さらにその上に段彫りのサンドブラスト加工をして椿の花を表現し、花弁や葉脈を立体的に見せています。彫りはかなり深そうです。
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③、④食堂ランマのサンドブラスト加工
地には、ピルキントンでいう”PLAIN CATHEDRAL"という凹凸の少ない型ガラスを使っています。さらに、表(凸凹でない面)には一枚一枚面取り加工をほどこし、裏(凸凹面)からサンドブラスト加工をしています。とくにツバメ、梅の雌しべは段彫りをしています。雲はボカシをつかっています。型ガラスの凹凸面にサンドブラストで模様を彫るには、彫刻面を平らにするため薄く施すことが出来ずある程度の深さが必要となります。
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⑤広縁突き当たりの窓
この窓だけ、洋風なデザインをしています。縁には、細い線を段彫りをして一段深く彫り、アクセントをつけています。また、サンドブラストも薄いのと普通のと2種類を使い分けています。
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⑥床の間横の壁の窓
これも、地が”PLAIN CATHDRAL"のガラスに、段彫りで凹凸面からサンドブラスト加工をしています。
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⑦暖炉両脇の戸棚の引戸
全面にケシ加工をした後、蔓草模様のサンドブラスト加工をしています。葉には、薄くかけたのと、蔓と同じ深さに彫った2種類があります。模様は上の両開き扉と統一しています。
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参照:Facdbook「古い板硝子」https://www.facebook.com/groups/4889876824428552/

2024年11月 8日 (金)

鳥羽大庄屋かどや 三重県鳥羽市 主屋:文政8年(1825) 東半分:明治17年(1884)以前 平成28年5月・令和6年10月見学

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 平成16年、広野家より寄贈をうけ、公開されました。色硝子と模様入りケシガラスは、東半分の建物に嵌まっていますが、実際には、創建当初ではなさそうですが、透明硝子や、色硝子に手吹き円筒法とおもわれる泡や、皺がみられます。ここでは、模様入りケシガラス、色硝子、手吹き円筒法の透明硝子をご紹介しようとおもいます。
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①片引き戸 模様入りケシガラス1種類、型硝子(ダイヤ)
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②両引き分け戸 色硝子(青・赤・緑)、模様入りケシガラス2種類
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③両引き分け戸 模様入りケシガラス1種類
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④4枚引き分け戸上部 下半分ケシ加工、ちらし模様
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⑤廊下外部ランマ嵌め殺し窓 全面ケシ加工ちらし模様
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⑥廊下内部ランマ引戸 色硝子(赤・青・緑)
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⑦座敷ランマ嵌め殺し窓 模様入りケシ加工雲井抜き
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⑧両引き分け戸 色硝子(赤・青・緑)、模様入りケシガラス1種類
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⑨両引き分け戸 模様入りケシガラス8種類、型硝子(ダイヤ)
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⑩両引き分け窓 色硝子(赤・青・、緑・気)、スリガラス
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⑪両引き分け窓 色硝子(赤・青・緑・黄)、スリガラス
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⑪下部両引き分け窓 色硝子(青・赤)
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⑫片引き戸 結霜硝子
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⑬廊下引き分け戸 手吹き円筒法透明硝子
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2024年11月 4日 (月)

VITA GLASS(ヴァイタガラス or ヴィータガラス)

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 1920年後半から30年にかけて、ヨーロッパでは、健康志向の高まりで、生理学者、ガラス化学者、動物園が建物を医療装置に変えるプロジェクトを開始しました。その頃、F.E.E.Lamplough(ランブロー)が製造にかかわり論文を発表して注目を浴びました。紫外線がバクテリアを殺し、ビタミンDの合成をうながすという長所に着目し、紫外線をより多く透過するガラスを開発し、「"VITA"ガラス窓を通じて日光の健康光線を永久に取り入れる」と主張し、各界で大々的なキャンペーンを行いました。
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F.E.ランブロー「"VITA"ガラスの特性と用途」『ジャーナル・オブ・ザ・ロイヤル ソサエティ・オブ・アーツ』Vol.77 No.

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その板ガラスの製造は、チャンスとピルキントンが製造し売り出しました。住宅のサンルームや、動物園の飼育舎の屋根、病院の医療用サンルームなどに使われました。しかし、1930年代後半になると、その有効性に疑問が残り、景気の後退により高価な商品が売れなくなり、生産中止に追い込まれました。
 太陽光として地上に届く紫外線は、近紫外線(波長380~200nm)とよばれる範囲になります。そのうち、UV-A(400~315nm)は、普通透明硝子とVATA硝子はおよそ88%の透過率ですが、UV-B(315~280nm)では、普通透明硝子はほとんど透過しないのに対して、VITA硝子は44%の透過率となります。しかし、UV-Bの領域の紫外線は多く浴びると皮膚癌や眼炎のリスクがあり、また、化学反応により、退色がおきるとされています。現在では、紫外線はできるだけ浴びない方向に向かっているようです。ちなみに、透明の飛散防止フィルムは、紫外線をほぼ99%カットされるため、紫外線カットには有効です。

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FS生「雜録 新しい硝子」『大日本窯業協会雑誌』36巻 432号 1928.12.20 より

 その"VITA"ガラスが、日本で見られるのです。ひとつは、明治村にある坐漁荘の2階のサンルールムの窓ガラスにエッチングで"VITA"の文字がほどこされている透明硝子が2枚あります。この部分は昭和4年に増改築した部分で、ヨーロッパの最先端製品を入れたのだろうとおもいます。もうひとつは、熱海の起雲閣の玉姫の間の窓ガラスの一枚に"VITA"のマークがあります。この建物は根津嘉一郎により昭和7年に建てられた洋館です。日本では、ヨーロッパの状況をいち早く取り入れていたことがわかります。

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坐漁荘

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起雲閣 玉姫

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