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2024年11月 4日 (月)

VITA GLASS(ヴァイタガラス or ヴィータガラス)

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 1920年後半から30年にかけて、ヨーロッパでは、健康志向の高まりで、生理学者、ガラス化学者、動物園が建物を医療装置に変えるプロジェクトを開始しました。その頃、F.E.E.Lamplough(ランブロー)が製造にかかわり論文を発表して注目を浴びました。紫外線がバクテリアを殺し、ビタミンDの合成をうながすという長所に着目し、紫外線をより多く透過するガラスを開発し、「"VITA"ガラス窓を通じて日光の健康光線を永久に取り入れる」と主張し、各界で大々的なキャンペーンを行いました。
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F.E.ランブロー「"VITA"ガラスの特性と用途」『ジャーナル・オブ・ザ・ロイヤル ソサエティ・オブ・アーツ』Vol.77 No.

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その板ガラスの製造は、チャンスとピルキントンが製造し売り出しました。住宅のサンルームや、動物園の飼育舎の屋根、病院の医療用サンルームなどに使われました。しかし、1930年代後半になると、その有効性に疑問が残り、景気の後退により高価な商品が売れなくなり、生産中止に追い込まれました。
 太陽光として地上に届く紫外線は、近紫外線(波長380~200nm)とよばれる範囲になります。そのうち、UV-A(400~315nm)は、普通透明硝子とVATA硝子はおよそ88%の透過率ですが、UV-B(315~280nm)では、普通透明硝子はほとんど透過しないのに対して、VITA硝子は44%の透過率となります。しかし、UV-Bの領域の紫外線は多く浴びると皮膚癌や眼炎のリスクがあり、また、化学反応により、退色がおきるとされています。現在では、紫外線はできるだけ浴びない方向に向かっているようです。ちなみに、透明の飛散防止フィルムは、紫外線をほぼ99%カットされるため、紫外線カットには有効です。

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FS生「雜録 新しい硝子」『大日本窯業協会雑誌』36巻 432号 1928.12.20 より

 その"VITA"ガラスが、日本で見られるのです。ひとつは、明治村にある坐漁荘の2階のサンルールムの窓ガラスにエッチングで"VITA"の文字がほどこされている透明硝子が2枚あります。この部分は昭和4年に増改築した部分で、ヨーロッパの最先端製品を入れたのだろうとおもいます。もうひとつは、熱海の起雲閣の玉姫の間の窓ガラスの一枚に"VITA"のマークがあります。この建物は根津嘉一郎により昭和7年に建てられた洋館です。日本では、ヨーロッパの状況をいち早く取り入れていたことがわかります。

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坐漁荘

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起雲閣 玉姫

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