浜松市美術館『大ガラス絵展』 令和7年7月19日~11月3日
ちょうど土用丑の日と、講演会が重なり、まず目標は、鰻を食することでした。浜松には、過去2回訪れていて、その度に鰻屋を探索してきましたが、今回3回目は、準備万端、開店30分前に行き予約をとって、食することができました。鰻屋によってそれぞれ個性があって、鰻の奥深さを実感しました。
さて、展覧会は、ドイツのアウスブルグ市アートコレクション&美術館を中心として、浜松市美術館が所有している内田コレクションなど、ヨーロッパ・中国・インドネシア・日本と、世界中のおよそ200点にもおよぶガラス絵が展示されています。『ガラス絵』というテーマでこれだけの量を一地方の美術館で開催することができたのは、内田コレクションがあっただけではなく、それをもとに美術館が研究を積み重ねた結果だとおもいます。さまざまな国て製作されている『ガラス絵』の研究拠点として、さらなる研究成果を期待しています。
講演会は、ドイツの美術館館長、学芸員、大学名誉教授の3人でした。『ガラス絵』の基本的な情報、技法、歴史などが講演されました。
今回の展示で、ガラス絵には、さまざまな技法を使って描かれているのがわかりました、金箔を貼ってそれを掻き取ってえがく技法や、螺鈿を貼る方法、ガラス絵特有の一般の絵画とは反対の描画方法で、どういう技術がつかわれたのかといった疑問に答えてくれました。
私の疑問で一番注目していることは、素材の板ガラスがいつ頃、どこで、どういう方法で作られたのかということでした。
カタログ所載の論文ジュリア・クワント「儚し芸術作品ーヨーロッパのガラス絵の歴史」によると、ヨーロッパで、ガラス絵が盛行したのは、16世紀前半に平滑で高品質のガラスが生産されてからで、製造場所は北東イタリアのヴェネトからチロルの広域な地域からということです。その頃の板ガラスがどういう方法でつくられていたかについて明確な言及はありませんが、今回の展覧会カタログには、数点のガラス絵の素材に関する調査報告が書かれています(森直義「ガラス絵の技法と修復」)。
そのひとつが、「基督降誕図」(浜松市美術館蔵)です。製作は16世紀後半、ヴェネチア・チロル地方で、ガラス寸法 27.0㎝×13.0㎝ 厚さ 3.0㎜~4.0㎜となっています。CTスキャンをもとにした3D画像によると、2辺にロールによってのばされた跡があり、いわゆる単ロール法によって板状にのばされたと確認できます。さらに、白色干渉顕微鏡によると、接地面には灰とおもわれるガラス表面の微細な凸凹があるということですが、ということは、接地面は、研磨をせず凸凹の状態で絵の具をのせたということになります。単ロール法での接地面は、ガラスは均一に冷却されないので、凸凹が生じます。ということは、透明にならないということです。この作品に使われている板ガラスがどの程度の透明度かは記述がありません。疑問の残るところです。
18世紀になると、ヨーロッパ各地で、手吹き円筒法による板ガラスの生産が活発になったということが、ガラス絵の普及からうかがえます。板ガラスの厚みも。1㎜から2㎜程度に薄くなります。そして、泡も楕円形になります。大きな板ガラスの生産は、産業革命のイギリスで、1830年代から工業化された工場で大量生産されるようになってからです。
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